「国民の生活が第一なんて政治は間違ってる」と言ってのける稲田朋美。彼女が国民の生活よりも大事にしたいと思っているものは、彼女の脳内にある「あるべき伝統ある日本」にすぎず、戦前日本の「国体」という実体のないものを守るために、300万人もの国民が死に至る戦争にいたったものと変わらないように思う。


もはやそうなると宗教めいてくるが、稲田朋美の主張は宗教そのものといってもよい。次のビデオは、2012年4月に撮影されたものだが、これをご覧いただきたい。




スポンサードリンク


このビデオの14:40秒あたりで、稲田朋美は「道義大国」というものを掲げる。

日本は中国でもアメリカでもない。人のものを欲しければ取りに来る覇権主義の国でもなければ、自分たちさえ豊かなら、大多数の人が貧しくても、豊かになった者勝ちの強欲資本主義の国でもない。高い道徳性と倫理観で世界中から頼りにされる道義大国を目指すべきだ。

ここまでは全く異論はない。覇権主義国家も、強欲資本主義国家を目指すべきでもない。今の安倍政権は覇権主義で強欲資本主義のアメリカとどんどん一体化しようとしているのだから、言ってることとやってることが全然違うように思えるが、高い道徳性と倫理観で世界中から頼りにされる道義大国を目指すべきだ、というのは正しい考えだろう。


しかし、ここから先、稲田朋美の主張は完全に宗教化するのである。15:10あたりから見ていただきたい。

そして、世界中で日本だけが道義大国を目指す資格があるんです。

意味不明である。


世界中、どの国だって、高い道徳性や倫理観で世界から信頼される国を目指すべきだし、そこに資格など必要ない。「日本だけが高い道徳性と倫理観で世界から信頼されうる」という優越主義こそ、高い道徳性と倫理観で世界から信頼される国の発言としてふさわしくない。


では、なぜ稲田朋美は、日本だけが道義大国を目指す資格があるなんて考えるのか。その理由が実に仰天である。

なぜなら、2500年以上、皇室が祈っておられたのはですね、国民の幸福と平和、それだけじゃなくて、世界人類の幸福と平和を祈っておられた。そんな国だから、私は道義大国を目指す資格がある、そして、そのことを、今回の震災の被災地の皆さん方も、世界に向けて発信してくださったと思っております。

意味不明もいいところである!!


まず、皇室が2500年以上の歴史がある、という時点で宗教だし、皇室が世界人類の幸福と平和を祈っていたなんて事実もどこにもない。


日本に「世界人類」なんて概念が登場したのは明治以降だろうし、そもそも世界と隔絶していた日本がどうして「世界人類の平和と幸福」なんて祈るわけがあろうか。また、小学校や中学校でまともに勉強をしたことがある人なら、壬申の乱をはじめとする皇位継承をめぐっての戦乱が古代から数多くあったことは誰でも知っていることである。江戸時代にはいるまで日本どころか国内でも戦争が絶えなかったし、さらに、つい70年前に世界中を相手に戦争を行った国が、「2500年間世界人類の幸福と平和を祈っていた」もなにもないものである。


私は別に皇室に文句があるわけではない。皇室を醜い優越思想に利用する稲田朋美に文句があるだけである。日本が世界人類の幸福と平和を祈った時期なんて、戦後70年しかない。世界人類の幸福と平和を祈るから道義大国になりうる、というのならば、なおのこと戦前の日本の在り方を否定し、戦後日本を肯定せねばならないだろう。


「2500年間世界人類の幸福と平和を祈ってきた皇室をいだく日本だけが道義大国になる資格がある」なんて意味不明なことを、被災地の人たちが発信した、などと考える稲田朋美の思考回路は理解のしようがない。なぜ被災地の人たちが、そんな宗教がかった思想を発信せねばならないのだ。


稲田朋美の論理では、皇室がないから他国は世界から信頼されえない、ということになってしまう。だが、他国からすれば、信頼できるかどうか、尊敬できるかどうかに、国王や天皇の存在など何の関係もない。今現在存在しているその国の行動が、信頼に値するかどうかだけが問題である。「皇室があるから日本を信頼しよう」なんて考える国は世界中どこにもないだろう。


「日本だけが道義大国を目指す資格がある」という稲田朋美の発想は、日本が世界一素晴らしい国だ、という優越主義と言わざるを得ない。日本が世界一素晴らしい国だ、という自画自賛する態度こそ、世界から信頼される道義大国にふさわしくない。もしそんな考えを世界に向けて発信しようものなら、世界から信頼されるどころか、世界から非難と嘲笑の嵐であろう。


日本には昔から「驕れるものは久しからず」という言葉がある。稲田朋美は「先人から受け継いだものを次世代に伝えていくことが大切」と言いながら、先人から受け継いだこの教訓をすっかり忘れてしまっているようだ。実際「日本は神の国だ」「日本は世界一だ」とおごり高ぶって、70年前に一度滅んだんだろうに。


日本が世界で唯一道義大国を目指す資格があるなどという発想は、同時に他国を見下すものでしかない。稲田朋美は今の日本を「自虐的」と呼ぶが、稲田が目指す日本は醜い自画自賛の裸の王様でしかない


これが今の自民党の姿であり、これが時期総理大臣とまで言われる女の姿なのである。


 にほんブログ村 政治ブログへ